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0からめぐる、ホテルのたのしみ
03| 料理について3人のプロが、語ること。

2023.11.30

  • 特集
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ホテルらしい華やかな美味しさと、健康。ふたつのバランスの上で彩りを放つ「ITOMACHI HOTEL 0」の中にある「RECEPTION CAFE」の料理は、東京代々木上原を中心にMAISON CINQUANTECINQなど数々の人気レストランを手がける丸山智博さんが監修し、メニューを栄養指導のスペシャリスト、河内瑠璃さんがチェックしています。丸山さん、河内さんとともにメニュー開発に携わり、運営も担う株式会社 GOODTIMEの入部圭介さんも交え、カフェのコンセプトと開発秘話を訊きました。

栄養素はプラス10%、カロリーはマイナス10%という“設計”


伊予青石の淡いグリーンと心地よい館内音楽に包まれる、RECEPTION CAFE。五感がほどけていく空間で、RECEPTION CAFEの料理は提供されます。コンセプトは、“愛媛の自然の循環を感じながら、健康になれるカフェ”。地元食材の“発掘”からメニューの開発などを担当するGOODTIMEの入部さんがその経緯を話します。

入部さん「ホテルは、『0からめぐる、愛媛のたのしみ。』というコンセプトの日本初のゼロエネルギーホテルであり、循環(めぐり)は大きな特徴の一つと言えます。ではカフェの軸は何かと考えると、人に対するめぐり、すなわち身体に考慮した料理を提供することでホテルとの親和性につながると考えました。しかし、健康に対する捉え方や考え方は千差万別です。そこで今回のホテルでは長寿、すなわちアンチエイジングに効果的な食事を提供してはどうだろう、と考えたのがこのカフェの始まりです」

▲RECEPTION CAFEの空間の一部

RECEPTION CAFEで提供されるメニューはすべて、厚生労働省が定める日本人の栄養摂取基準から、健康を促進する抗酸化作用等のある栄養素がプラス10%、カロリーはマイナス10%になるように基準を設けています。ITOMACHI HOTEL 0が自ら生み出す電力と使用する電力を“相殺”するエネルギーサイクルになっているように、食事でもわかりやすく健康を数値化。食材のセレクト、調理法まで細かい配慮でメニューが成り立っています。指導にあたった管理栄養士の河内瑠璃さんは、ダイエットカウンセリングやクリニックでの栄養指導をメインにのべ4000人以上をサポートした実績を持ちます。

河内さん「アンチエイジングにはいろんな栄養素が関わってきますが、特にビタミンA、ビタミンC、ビタミンEの3つがポイントになってきます。実は私自身、旅先の食事について相談を受けることがとても多いです。普段、食事に配慮している人も、ここでは罪悪感なく、思いっきり食事を楽しめます。食事をたのしみにながら健康にも気を遣えるホテルの朝食って案外ないと思いますよ」

▲モーニングもランチもデリカテッセンスタイルをとる。“選ぶ楽しさ”が人気の秘密。パンとご飯(玄米か白米)はおかわり自由

“いい地元食材”を発掘し、自由なアイデアとで生まれた料理たち


ホテルという非日常を堪能する食事には、健康以上に“美味しい”ことが求められます。“健康な食事であること”をきちんと数値化しつつ、食材、調味料、調理法の工夫でRECEPTION CAFE ならではの美味しさを生みだしました。

入部さん「以前、栄養価、カロリーなどの数値も掲げて健康に特化した飲食店で提供された、塩味の極端に薄い味噌汁を飲んだ時、これはホテルでの体験には適さないと感じました。そこで、ホテルの非日常を表現する際、美味しさと健康の2軸を効果的に組み立てる様に考えました」

その難しいバランスを見極め、メニュー全般を監修したのが株式会社シェルシュ代表の丸山智博さんです。フレンチレストランで腕を磨いたのち、2010年以降、東京・代々木を中心に個性的な飲食店を立て続けにオープン。第一線のシェフでありプロデューサーでもある丸山さんと入部さんがつくりあげた料理は、フレンチをベースにしながらもさまざまな“枠”にとらわれず、美味しさが軽やかに身体に入っていきます。

▲左から丸山智博さん、河内瑠璃さん、入部圭介さん

丸山さん「僕も入部さんも普段、フランス料理をベースに考えているので、そこは崩さず自分たちの一番得意なところでメニューを考えていこう、と。それが結果、美味しさにつながると思って開発を進めていきました。ただ、フランス料理をやろうとはしませんでした。いろんな国のいろんな美味しいもののテクニックとか、スパイスといった食材を散りばめてこのホテルらしさを作れないかなと模索しました」

メニュー構築のヒントになったのは、地元の食材。例えば、モーニングのメインメニューに、エッグベネディクトがあります。エッグベネディクトといえば、イングリッシュマフィン、ベーコン、ポーチドエッグを重ね、オランデーズソース(卵黄、バターとレモンをベースとした風味の良いソース)をかけるのが一般的。一方、栄養面やカロリーに配慮したITOMACHI HOTEL 0のエッグベネディクトは、ベーコンの代わりに大豆ミートのハム、マフィンの代わりに長ネギを使用しています。メニューの決め手となった長ネギは、愛媛県西条市で営む「稲垣農園」産。産地の現場をめぐり、たどりついた地元食材の逸品のひとつです。

入部さん「かねてよりホテルの朝食に卵料理を出したいと思っていて、盛り付けの華やかさや、アレンジのしやすさなどからエッグベネディクトはどうか、と考えていました。でも、卵の上に載せるのがベーコンやマフィンではカロリーオーバーになりますし、栄養素も十分とはいえません。こだわりと思いの強い稲垣農園さんの長ネギと出会って、このネギを使えばITOMACHI HOTEL 0ならでは”のエッグベネディクトが成立するのではないかとひらめきました」

「いい食材に出会ってメニューが浮かぶ」と、常々口にしていたのは丸山さん。エッグベネディクトは、丸山さんの思いと思考を入部さんがすくいとり、仕上がった一皿です。

▲エッグベネディクトは、エサにこだわる地元の養鶏場「熊野養鶏」の卵を使う

▲ホテルのカフェを支える生産者の方々。左から寺尾果樹園さん、稲垣農園さん、熊野養鶏さん

▲愛媛名産の鯛のスモーク。愛媛名産の柑橘を使った酸味のあるラビゴットソースがかかる。名産と名産の掛け合わせ、香りと味わいの相乗を楽しめる

“ITOMACHI HOTEL 0流”が、フランス料理のイメージを変える


その土地の“いいもの”をできる限り発掘し、使用するだけではなく、地元発祥の料理にも着目。例えば、メニューにある「石花汁(せっかじる)」は、愛媛県内でも今ではあまり知られていない郷土料理です。

丸山さん「僕自身、“その土地ならでは”の美味しさだったり、生まれたルーツを探ったりするのが好きだし、楽しい。その土地で生まれた料理は、とても自然な流れの上に存在します。だったらその調理法を活かした方が美味しいものができるはず。今回も、いつも大事にしているアプローチでメニューができています」

地域に息づく食材や料理、風土を手がかりに、それぞれの経験、味覚とセンスで仕上げたITOMACHI HOTEL 0の料理は、各式高く、ソースなど手間を施したものというイメージがあるフランス料理の、捉え方や味わい方を軽やかに変えてくれます。

丸山さん「僕が考える現在のフランス料理はもはや和食化しているというか、イタリアンっぽいというか、同じく食材ありきなんですよね。食材や食感、香りの組み合わせの妙がフランス料理らしさです。そうやってシンプルな中にも美味しさに奥行きが出る工夫をする。今のパリの人気レストランもそういう考え方です」

▲愛媛県今治市の伝統的な郷土料理「はだか麦の石花汁」

▲愛媛産鶏胸肉を使ったガランティーヌの試作を行う丸山さん

ホテルと飲食店の使命。2つが重なり、体現されたRECEPTION CAFE


ランチ(11:30〜14:00)はどなたでもRECEPTION CAFEの空間と料理を堪能できます。ちょっと特別なホテル料理をランチでいただく。地元の人たちにとって新しいたのしみ方が一つ、増えました。

丸山さん「地域の人たちに“美味しいもの”や食文化、この空間のよさを伝えていくことが地域の食の未来にとってきっとプラスになります。地元の生産者さんにも開かれることで、彼らにとっても新しい発見やモチベーションにつながったらうれしいです。普段とは違う料理になることで、自分たちの手でつくったものがこうなるんだなあと喜んでくれたり、喜ぶお客さんを実際に目の当たりにしたりすることが、やりがいにつながります。生産者さんがより一層美味しいものを目指せば、料理を提供する側の意識も高まります。そんな食の“いい循環”が、飲食店の使命でもあると思うんです」

河内さん「食事をたのしみながら身体に良いものを食べることができ、身体にも心にも嬉しいメニューが揃っています。罪悪感のない食事をたのしみたい方にぜひ足を運んでいただけたらと思っています」

ホテルの宿泊者だけではなく、地域に開かれること。ITOMACHI HOTEL 0のコンセプトと、丸山さん自身が考える飲食店の使命と、さらには河内さんの考える罪悪感のない食のたのしみが重なり、体現されたRECEPTION CAFE。地域ならではの、この空間ならではの“心地よい循環”を味わってみませんか。

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ハタノエリ

1978年宮崎県生まれ。全国10都市に暮らしたのち、愛媛が気に入り移住。
現在、愛媛県松山市のデザイン会社「株式会社ERIMAKI」取締役。ディレクター、ライターとして県内外で活動。

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