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0からめぐる、ホテルのたのしみ
02| インテリア・ランドスケープデザイナーが語ること。

2023.08.04

  • 特集
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今回お届けするのは「ITOMACHI HOTEL 0(ゼロ)」のインテリア・ランドスケープデザインを手がけた「Dugout Architects(ダグアウト アーキテクツ)」の代表・渡瀬育馬さんと内海大空さんのインタビュー。東京都を拠点に全国各地で活躍する建築家の二人が、西条を歩き、風土や人々からまちを知り、その中から浮かびあがったものをホテルのデザインに落とし込んでいます。空間を考えるプロセスやアプローチ、ホテルへの思いを訊きました。

愛媛の石、「伊予青石」を色、使い方でモダンにみせる。


ITOMACHI HOTEL 0(ゼロ)の空間で、印象付けるエッセンスの一つが“色”です。空間を彩る淡いグリーンは、愛媛県で産出される「伊予青石」から引き出したカラー。ホテルが立つ水都・西条の清らかな風土が色彩からじんわりと伝わってきます。

Dugout Architects(以下、ダグアウト)の渡瀬さんと内海さんは、「いとまち」の周辺や街中を歩き、出会った人たちと会話を交わしながら、西条という地域を表す手がかりを少しずつ探していきました。その中でまず目に留まったのが、伊予青石でした。

▲ジュラ紀中期 (約2〜1.5億年前)に湖や海底に堆積した土砂から生まれた伊予青石

▲RECEPTION CAFE棟では、床のタイル、カーテンなどに“伊予青石グリーン”を使用

渡瀬さん「ホテルのインテリアとランドスケープを考える上で、地元で当たり前にある素材を使って、特徴や魅力を引き出すデザインができるといいなというのを最初に描いていました。このまちをつぶさに見てみると、本当にいろいろな場所で伊予青石と出くわすんです。中山川や加茂川はもちろん、市役所や公園にもとにかくいっぱいあって。地元の人にとっては“普通”のことかもしれませんが、初めて西条に来た僕たちにとってはとても印象的でした。このまちの“普通”の風景を、ホテルを訪れた人にも感じてもらいたいと、伊予青石を西条の色と捉えてデザインの軸となるカラースキームをつくりました」

日本庭園の景石や敷石などでなじみ深い伊予青石。二人は、これまでの使い方とは一線を画し、“モダンに見せる”ことに挑みます。そして、伊予青石の色だけでなく、石そのものも取り入れることで石の新しい魅力、価値を生み出します。

内海さん「ホテルの建設現場にも伊予青石がたくさん落ちていたんです。真冬に2人で凍えながら石を拾って、ゲストを迎えるカウンターに使っています。伊予青石に直接触れることで、このホテルの体験のスタートにしたいと考えたんです」

渡瀬さん「このホテルは環境省が定める『ZEB』※の認証を取得しているので、インテリアに再生材やサステナブルな素材を単に使うだけではなく、目にみえるデザインとして取り入れることも意識しています。そういう意味で、拾った石は究極の再生材なんですよ」
※ZEBとは ( https://www.env.go.jp/earth/zeb/about/index.html )

▲RECEPTION CAFE棟の中央に配置されるカウンター。伊予青石を研ぎ出して仕上げた

▲うちぬきひろばなど、ホテルを取り巻くランドスケープにも伊予青石があしらわれている

▲Dugout Architects代表の渡瀬育馬さん(右)と内海大空さん

もうひとつのデザインのモチーフ、“あたらしい”うちぬき。


もう一つ、ダグアウトが導きだしたデザインのモチーフが隠されています。それが、西条での生活には欠かせない「うちぬき」。名水百選にも選ばれるうちぬきは、石鎚(いしづち)山系から流れ出した加茂川の伏流水で、地下にパイプを打ち込むと地下水が吹き出す自噴井(じふんせい)のこと。街中のいたるところに無料の水汲み場があり、水道代が無料の地域もあるほどです。市民にとって当たり前のゆたかさを、ホテルのモチーフとしてインテリアやランドスケープに取り入れています。

中でもシンボリックな存在が、ホテルの中庭にあるうちぬきの水場。どこから見ても視点が集まり、人が集う場所にうちぬきを配置しました。

渡瀬さん「子どもや家族連れが休日楽しむ、いとまちマルシェにある『じゃぶじゃぶ池』とは対比的に、ホテルの中庭は“大人の水の遊び場をつくってほしい”というオーダーがGOODTIMEの明山さんからありました。大人は子どものように水の中にバシャっと入るのは難しい。ホテルに来た人が『ちょっと触ってみたいな』、と少し手が伸びる仕掛けをこの中庭に作りたいと考えました。水が段々と下に落ちる構造にしたのは、上の方で食べ物を洗って、真ん中の段で食器を洗って、下の段では食べ物の残りカスを魚が食べる、みたいな昔の風景からヒントを得ています。ホテルでもそんなふうに、上の段で飲み物を冷やしたり、触れたり、落ちていく水を見たり音を聴かせたりと多彩な水との関わり方ができれば、と。かつてあったうちぬきの風習を、ホテルらしくアレンジしてできあがったのがこの水場です」

▲うちぬきの周りをバーカウンターやベンチで囲み、読書をしたりお酒を飲んだり、思い思いにコミュニケーションを紡ぐ場所になっている

▲「水をきれいに落とす直線のラインに仕上げるのが本当に大変でした」と渡瀬さん

うちぬきの仕掛けは客室にも。客室のドアを開けると、大胆にも目の前に洗面台が現れます。通常、インテリアの軸にはならない洗面台をあえて入り口近くに置くことで、客室内でも水の存在感を際立たせています。

内海さん「洗面台がなめらかな斜面になっていますよね。これは西条藩の家紋・隈切葵紋から発想しています。徳川家の家紋の角をすっと上品に落とされている隅切りをモチーフに洗面台や鏡、扉などいろんなところで採用しています。西条藩の話は、西条で地元の方とお酒を飲んでいるときに教えてもらったんです。市民の皆さんは誇りに思っているんですね。単純に斜めにすっと切っていると機能的な面もあり、デザインの遊び心みたいなものに置き換えて随所に配しています」

▲客室のドアを開けると、真っ先に目に入るのが洗面台

▲うちぬきのように、下から水がわきあがってくる水栓を採用(一部客室のみ採用)

すべてが一体になる。緻密につくりあげた心地よさ。


ディテールに凝りながらも、建物とランドスケープ、インテリアが一体となったITOMACHI HOTEL 0。前提には、二人の建築への深い造詣と理解があります。
渡瀬さん「10年、20年、30年と、ITOMACHI HOTEL 0の“色”をしっかり持って運営されていくことが一番大切です。そこに対して僕らができることは、このホテルの一貫性をどう担保していくかということ。隈研吾建築事務所さんの建物デザインと僕たちのインテリア・ランドスケープデザインが、ホテルを訪れた人の体験として心地よくつながることを意識しました。僕らは建築家ですが、今回のようにランドスケープやインテリアだけの依頼を受けることもあります。その際も、それだけで考えるというよりかは建物や中身がどうなっているかを踏まえます。特にランドスケープは、プロジェクトの中でも最後の段階であることが多いので、インテリアから見たらどうかという視点も大事にしています」

建築の本質、ホテルのコンセプト、この土地らしさを汲みとり、地元の人が当たり前にあるもの、誇れるものに対し、新しい見せ方を提示したインテリア、ランドスケープデザイン。
二人が解釈した“西条らしさ”をあちこちで発見するのがITOMACHI HOTEL 0の、ひとつの愉しみ方です。

渡瀬さん「西条市は、西条藩があったり、民芸館があったり、青石にまつわるパワースポットがあったり、深堀りすればするほど味のあるまちでした。うちぬきや伊予青石をはじめ、西条に根付いた文化資源をベースに、『いとまち』のまちづくりというアドバンテックさんの大きな構想の中で、このITOMACHI HOTEL 0 が西条のシンボルとして地域活性の一つの足掛かりとなることをめざし、できあがった空間です。伊予青石の美しい色合いに包まれ、薄霞がかった瀬戸内海の風景とひと続きになった空間をぜひたくさんの人に体験してほしいですね」

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ハタノエリ

1978年宮崎県生まれ。全国10都市に暮らしたのち、愛媛が気に入り移住。
現在、愛媛県松山市のデザイン会社「株式会社ERIMAKI」取締役。ディレクター、ライターとして県内外で活動。

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