ARTICLE

0からめぐる、ホテルのたのしみ
09 | ホテルを運営する人たちが語ること。

2024.08.13

  • 特集
ARTICLE

2024年5月で開業1周年を迎えたITOMACHI HOTEL 0。日本初のゼロエネルギーホテルとして、地域のいいものに新しい角度から光をあてた空間や料理、演出で話題を集めてきました。今回は、ホテルゲストに日々向き合いながら、地域の人たちとの関わりも大切にする運営スタッフのみなさんに話を訊きました。

ゲストが求めるもの。体験や過ごす時間の豊かさ


建築、インテリア、料理などホテルをかたちづくる有形のものに加え、ゲストが満足感を得るための大事なエッセンスが、ホテルのサービス。非日常に身を置きながらもいかにリラックスして快適に過ごせるか–。心を割きながらホテル運営を担うジェネラルマネージャー・河井直幸さんは、ITOMACHI HOTEL 0の特徴をこう話します。

河井「私自身はこれまで、世界的に展開するホテルチェーン含め25年近くこの業界に勤めてきました。ITOMACHI HOTEL 0は非日常と日常の隙間にあるような、これまで経験したことがないホテルです。お客さまが求めるものもこれまでとは違います。対価に見合ったサービスを求めるのではなく、ここでの体験や過ごす時間の豊かさを求められている気がします。だからでしょうか、気持ちに余裕のあるお客さまが多いのも印象ですね」

ITOMACHI HOTEL 0周辺は、観光地というエリアではなくビジネスホテルが多いエリア。スタッフの石橋憂樹さんは、このホテルに泊まるのを目的に西条へ来られるゲストが多いことに驚かされる、と言います。

石橋「隈研吾さんの建築だったり、ゼロエネルギーの取り組みだったり、インテリアの評判を聞いたりして一度見てみたいとホテルへ訪れるお客さまがかなりいらっしゃいます。ホテルが目的でもせっかく西条市に来てくれたのだから、自ら足を運んで得たガイドブックにも載ってないような情報をお伝えしたいと思っています。ここで働くようになって地元の知識がどんどんアップデートされていっていますね。とてもやりがいを覚えます」


▲「私の子どもたちも大好き」(石橋さん)という「いとまちマルシェ」。水浴びしたり芝生の上を走り回ったり安全に遊ぶことができる


▲中央・河井直幸さん、左・楠唯さん、右・石橋憂樹さん

ゲストの過ごし方の数だけ、柔軟なサービスを心がける


部屋のタイプも多岐に渡り、中庭やスタジオ、コワーキング、キッチンなどさまざまな過ごし方に合わせた場所を設けているのもITOMACHI HOTEL 0ならでは。だからこそ、一般的なホテルとは少し違う、自由に過ごすたのしみ方ができます。

河井「いとまちマルシェや近くのスーパーで買い物をしてチェックインされるようなお客さまもいらっしゃいます。ホテルのCOWORKING & KITCHENで別の家族同士が調味料の貸し借りをきっかけに交流しているのを垣間見ることがあり、自然にコミュニケーションが生まれることもこのホテルでは珍しくありません。お客さま自らがこのホテルでのたのしみ方を見つけてくれるので、私たちにとっても新たな発見があります」


▲COWORKING & KITCHENでは料理を通じて宿泊者同士の交流も生まれる

多様なサービスや空間を用意するホテルでは、そこで働くスタッフたちの柔軟性も求められます。マニュアルだけでは通じない、ゲストの要望に応じたITOMACHI HOTEL 0のサービス。長いホテルマン人生を送る河井さんの、サービスで大事にしていること、とは。

河井「僕が大事にしていることは目配り・気配り・心配りの3つです。気配りは教えられるものですが、心配りはスタッフがそれぞれ本来持っているマインドで、個性がはっきりと出ます。お客さまに対してその3つさえちゃんと想いや指針を持ってやってくれれば、そのスタッフらしい、しかも柔軟なサービスが自然とできるものだと考えています。

私が心を配っているのはもう一つ、スタッフ自身が楽しんで仕事をすることです。お客さまは従業員の雰囲気で、そのホテルの雰囲気ってだいたい分かってしまうもの。ですから、従業員自らが楽しんで働ける環境づくりがとても大事です。ホテルというサービス業は大変な仕事です。だからこそ、スタッフ一人一人が『あれやってみよう、これやってみよう』とワクワクしながら考えたり、楽しくお客さまと接したりすると結果的にお客さまの満足度が上がっていくと考えています」


▲ホテル開業前の、スタッフ打合せの様子

地域を発信する、地域を変える。そんなホテルをめざす


ITOMACHI HOTEL 0は、地域のいいモノ・コトを発信していくことにも力を入れています。スタッフの楠唯さんにとって、これまで一番印象深かったイベントは、今夏に開催した地元高校生による1日限りのレストランでした。

楠「西条農業高校の学生さんと一緒にコラボレーションして、高校生が考えたメニューと、高校生が作ったお米や野菜を使って1日限定でレストランを開いたんです。自分たちの手によって丁寧に作られた食材を使用した料理で、多くのお客さまを笑顔にしている姿を間近で見て、私自身新しい刺激をもらえました。今回のイベントのように、ホテルを通して地域の素敵な取り組みを発信することで、愛媛に暮らす人たちと訪れる人たちの新しいつながりをたくさん生みだし、地域活性化につなげていけたら嬉しいです」

河井「地元に愛されるホテルを目指す中で、地元のみなさんがこのホテルに来たいと思ってもらえる場所にしたくて企画したイベントです。西条農業高校さんがすごくいい取り組みをされています。例えばソーラーパネルの下で新しい農業モデルとして青パパイヤを作ったり、サラダ菜でグローバルギャップという認証制度を取得したり、新しい農業にチャレンジしています。中でも青パパイヤの取り組みは脱炭素チャレンジカップ2024で環境大臣賞 金賞に輝きました。ホテルを通して、こうした地域のいい取り組みを広めるお手伝いをしていきたいですね」


▲地元の高校生が大活躍した、1日レストラン

2年目に入り、リピーターも増えてきたITOMACHIHOTEL 0。地域とゲストを丁寧につなぎ、ますます地域に開かれたホテルを目指していきます。

石橋「お客さまに西条の魅力を知っていただくために、僕自身が地域を学ぶことで西条の印象がより魅力的に変わりました。さまざまな場所をニーズに合わせてご案内できるように、これからも西条のまちを学んできたいです」

楠「まだまだ愛媛の方に知られていないので、“旅行”のみならず、ちょっとした息抜きであったり、 “日常づかい”として気軽にお越しいただいたり、地域住民の方に開かれたホテルになるとうれしいですね」

河井「まちの人たちが元気になる場を、このホテルでもっとつくりたいです。海外からこのホテルを目指して予約してくれるお客さまも増えてきて、地域の人たちから『この地域にも海外の人がだんだん増えてきたね』という声をいただくんです。海外のお客さんが地元のお店や人たちと触れ合うことにとても意味があると思っています。わたしたちの取り組みが、西条のいい未来につながるような“架け橋”になれればうれしいです」

ARTICLE

ハタノエリ

1978年宮崎県生まれ。全国10都市に暮らしたのち、愛媛が気に入り移住。
現在、愛媛県松山市のデザイン会社「株式会社ERIMAKI」取締役。ディレクター、ライターとして県内外で活動。

SHARE

  • TWITTER
  • Facebook
  • LINE

関連する記事

3つの会員特典

RESERVATION

チェックイン 15:00/
チェックアウト 11:00

※プラスチックゴミ削減の観点から、歯ブラシ・ヘアブラシ・シェーバー等の使い捨てのアメニティは客室にご用意しておりません。

3つの会員特典

① ベストレート保証
② おでかけドリンクサービス
③ 会員限定の先行予約

3つの会員特典